仕事で英文メールを書く機会が増えている人は多いだろう。慣れないうちは、時間もかかるし、自分の書いた内容に自信が持てないものだ。本題に早く入りたいのだが、導入部でつまづき時間がかかるというのは、よくある悩みだろう。
- 送るメールの背景を簡潔に書きたい
- 実施した会議のフォローをして、相手のアクションを促したい
- 自分の対応している案件の状況報告をしたい
上記のシーンは、仕事をしていれば日常的に発生する。日本語メールであれば、何も意識をすることなく、導入部を済ませて本題にすぐ入れるのに、英文だと一行目が重い、と悩んでいる方は多いのではないか。だが、実はこの「英文メールの書き出し」というのは実はそんなに難しいことではない。それぞれのシーンで鉄板の型があるため、その型さえ覚えてしまえば書き出しを10秒ですますことができる。効率的に仕事をすすめるためには、書き出しに時間をかけないことはとても大事だ。
私は仕事で英語を使い初めて15年ほどたつ。現在はアメリカに住み、アメリカの現地企業に日本人一人で仕事をしている。一日に300通くらいのメールを読み、50−60通くらいのメールを英語で書いている。さすがに、書き出しでつまづくことはないし、本題をどうまとめようかと考えながら、手が自然に動いて導入部分を書き終えるということが殆どだ。私は同僚のアメリカ人が送付したメールから使えそうな言い回しを抜粋してストックしている。このシリーズでは、そのストックの中から頻繁に使っている鉄板の型を紹介し、読者の英文メールを書く時間の大幅な削減のお手伝いをしたい。
送るメールの背景や目的を簡潔に書く
新規にメールを書く場合、そのメールの目的や背景を冒頭で簡潔に書くことが求められる。背景や目的が明らかな場合は、省力しても構わないが、下記のような場合は、背景をきちんと書いたほうが、相手の理解やアクションを促しやすい。
- 期日付きで何かを依頼する場合
- 宛先に自分が普段コンタクトをとらない人が大勢入っている場合
- 多くの人に何かを周知する必要があり、かつその内容が長い場合
書き出しが冗長だったり、たどたどしいと注意を払ってもらえないので注意が必要だ。多くのアメリカ人はメールの内容を逐一確認し、理解をして、丁寧に対応することはしない。ぱっと見、面倒くさそうなもの、わかりにくいものは、平気で処理済みのフォルダーに放り込んでしまう。丁寧なメールを書いたのに全く返信がないという経験をした人は多いだろう。「わかりにくいものはスルー、もしそれが本当に重要だったらまた言ってくるだろう」というマインドなのだ。前置きが長くなってしまったが、3つほど鉄板の表現を紹介したい。
I am reaching out to you to 〜 (〜の件で連絡をさせて頂きます)
<例文>
I am reaching out to you to get a better understanding of how the account level quotas for North America region were set.
北米の顧客毎のターゲットがどのように設定されたのか、確認するための連絡をさせて頂いております。
この書き方は、自分が相手に連絡をしている理由を自然に説明することができる。”The reason I am reaching out to you”という言い方でも、もちろん意味は通るのだが、少しもさっとした印象を受ける。また、この”reach out to”というのは、色々なシーンで使える便利な表現。何かこちらからの手助けを申し出たり、相手の注意関心を引きたい時によく使うので、書き出しに限らず覚えておくと便利だ。
本題からは外れるが、”get a better understanding”というのも便利な表現。「いや、わけがわからないんだけど、どういうこと(怒)」という時があると思うが、”Please help me to get a better understanding of how 〜”という言い方は、”not sure where you are coming from”とかより、ずっとマイルドなので、相手の支援がえられやすい。アメリカ人は攻められると、ガードが固くなるので、「私がより状況を理解するのを助けてもらえませんか」と言ったほうが、返事をもらえる可能性が高くなる。
I wanted to send you a update on 〜 (〜の件について状況の報告をさせて頂きます)
<例文>
I wanted to send you a quick update on the current progress of the project as follows.
プロジェクトの進捗につきまして、以下の通り手短に報告させて頂きます。
進めているプロジェクトなどの仕事の進捗を報告しないといけないシーンは多い。そんな時に、書き出しとして使えるのが上記の表現だ。主語を省略して、“Wanted to give you an update on”というように書く人も結構多い。進捗報告ではなく、もう少し内容について説明したい場合は、“I wanted to send you a note that 〜”みたいにしてthatの後に文章をもってくるやり方もある。
なお、この表現はよくでてくるのだが、wantが過去形なのがずっと謎であった。英文法などに詳しそうな年配の同僚に聞いてみたのだが、「最近の人は文法の正しさをあまり気にしないんだよね」とのことで、これが文法的に正しいかどうかははっきりしなかった。一応、「今現在だけでなく、少し前からそうしないといけないと思っていた」というニュアンスがあり、”I have wanted to send you”が変化したのだろうというコメントはあった。
Long story short, (手短にまとめますと)
<例文>
Long story short, I’ve attached the new incentive program proposal which needs your approval. Below is the summary of this program.
手短に結論から申し上げますと、下記の新しいインセンティブプログラムについてご承認をお願いしたいと思います。以下、プログラムの詳細を説明致します。
メールの背景や目的を説明をすっとばして、本題からずばっと入ることの方が実は多い。なので、結論から述べて、その後に背景や詳細を説明する際に、“Long story short”は便利な表現だ。「背景はすっ飛ばしてまずは結論から言いますよ」と前置きした上で、「後に長い説明があるけど読んでね」というニュアンスを3単語で伝えることができる、効率の良い表現だ。これは、おそらく”I’ll make a long story short”の略だと思うが、略さないバージョンはあまりみない。
なお、冒頭で書き出しとして使うこともあるが、長い説明の最後に持ってきて、“So long story short, “でまとめるという形もある。「長々と説明させて頂きましたが、まとめますと」というような感じで要点を最後に確認する時にも使える便利な表現だ。
まとめ
メールの背景や目的を説明する、英文メールの書き出しとして以下の3つの表現を紹介してきた。どれも、使い勝手の良い表現なので、是非参考にして頂いて、英文メールを書く時間の短縮に役立てて頂きたい。
- I am reaching out to you to 〜 (〜の件で連絡をさせて頂きます)
- I wanted to send you a update on 〜 (〜の件について状況の報告をさせて頂きます)
- Long story short, (手短にまとめますと)
なお、例文の殆どは私が実際にアメリカ人から受信したメールからの抜粋だ。私はIT企業のファイナンスやセールスオペレーションでの経験が長いので、同じ職種の方は、ほぼ丸パクリできるケースもあると思うので、お役に立てれば幸いである。
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